Evrogen社 蛍光タンパク質発現ベクター
Evrogen社は、高輝度のBasic蛍光タンパク質や光応答性蛍光タンパク質、カルシウムイオンや過酸化水素濃度の変化を検出可能な蛍光タンパク質など、さまざまな蛍光タンパク質発現ベクターを中心に販売しています。ここでは、タンパク質の局在化や相互作用解析、プロモーター活性の検出、細胞やオルガネラの標識などに使用されるTagFPsおよびTurboFPsを紹介します。
スペクトルデータ
TagFPs
TagFPsは、モノマータイプの蛍光タンパク質です。Evrogen社では、TagFPs融合体作製用ベクター、局在化解析用ベクターを用意しています。
特長
- モノマータイプの高輝度蛍光タンパク質発現ベクター
- タンパク質局在化解析や相互作用解析が可能
- 局在化や相互作用解析のマルチカラー解析も可能
使用例
■哺乳類細胞におけるマルチカラー標識
(A)TagCFP-β-アクチン融合体(シアン)、TagYFP-α-チューブリン融合体(黄色)を用いた細胞骨格標識、TagFP635-H2B融合体(赤色) を用いた核標識、TagRFP(紫色)を用いたゴルジ体標識
データ提供:Michael W. Davidson(Florida State University)
(B)TagCFP(シアン)を用いたミトコンドリア標識、Dendra2*(緑色)を用いたビメンチン標識、TagRFP-β-アクチン融合体(赤色)を用いた細胞骨格標識
*Evrogen社より販売の光応答性蛍光タンパク質
主な性質と推奨用途
製品グループ | TagFPs | ||
---|---|---|---|
CFP | YFP | RFP | |
蛍光色 | シアン | 黄色 | 赤(橙) |
励起波長 | 458nm | 508nm | 555nm |
蛍光波長 | 480nm | 524nm | 584nm |
量子収率 | 0.57 | 0.62 | 0.48 |
分子吸光係数 | 37000 | 64000 | 100000 |
輝度 | 21.1 | 39.7 | 48.0 |
EGFPに対する輝度(%) | 64 | 120 | 145 |
pKa | 4.7 | 5.5 | 3.8 |
構造 | 単量体 | 単量体 | 単量体 |
凝集性 | なし | なし | なし |
成熟(37℃) | 迅速 | 迅速 | 迅速 |
光安定性 | 髙 | 髙 | 中 |
分子量(kDa) | 27 | 27 | 27 |
推奨用途 | |||
細胞ラベリング 哺乳類 | ○ | ○ | ○ |
細胞ラベリング バクテリア | ◎ | ◎ | ◎ |
プロモーター活性 | ○ | ○ | ○ |
安定発現 | 可能 | 可能 | 可能 |
複合体作製 | ◎ | ◎ | ◎ |
TagFPsの適切なフィルターセットについて
TagCFP | XF114-2、XF130-2(オメガ社) *ECFPフィルターセットおよび類似のフィルターセットでも検出可能 |
TagYFP | XF104-3、XF105-2フィルターセット(オメガ社) *41028Yellow GFP BP(10C/Topaz)フィルターセット(Chroma Technology社)および類似のフィルターセットでも検出可能 |
TagRFP | QMAX-Yellow、XF108-2、XF101-2、XF111-2フィルターセット(オメガ社) *TRITCフィルターセットおよび類似のフィルターセットでも検出可能 |
TagCFP
TagCFPは、野生型GFP様タンパク質であるクラゲ類Aequorea macrodactyla由来の変異体タンパク質です。シアン色のTagCFPはECFPと比較し、高輝度の蛍光を示します。哺乳類細胞で発現させた場合、トランスフェクションの10-12時間後から蛍光シグナルを検出可能で、細胞毒性や凝集も確認されません。
■TagCFPを用いた哺乳類細胞での発現
(A)ミトコンドリアをターゲットとしたTagCFPのU-205(ヒト骨肉腫)細胞での一過性の発現、(B)TagCFP-α-チューブリンのHeLa細胞における一過性の発現、(C)TagCFP-β-アクチンのHeLa細胞での一過性の発現
データ(A)提供:Dr. Christian Petzelt(Marinpharm)
製品名 | メーカー 製品番号 | 容量 | オンライン カタログへ |
---|---|---|---|
TagCFP哺乳類細胞発現ベクター | |||
pTagCFP-C | FP111 | 20μg | |
pTagCFP-N | FP112 | 20μg | |
TagCFP局在化解析用ベクター | |||
pTagCFP-actin | FP114 | 20μg | |
pTagCFP-tubulin | FP115 | 20μg | |
pTagCFP-mito | FP117 | 20μg |
TagYFP
TagYFPは、緑色蛍光のTagGFPタンパク質を改良し開発されたタンパク質です。TagYFPはEYFPと比較し、pH安定性に優れます。哺乳類細胞で発現させた場合、トランスフェクションの10-12時間後に蛍光シグナルを検出可能で、細胞毒性や凝集も確認されません。
■TagYFPを用いた細胞質およびオルガネラでの発現
哺乳類細胞における全細胞(A)およびミトコンドリア(B)をターゲットとした発現
製品名 | メーカー 製品番号 | 容量 | オンライン カタログへ |
---|---|---|---|
TagYFP哺乳類細胞発現ベクター | |||
pTagYFP-C | FP131 | 20μg | |
pTagYFP-N | FP132 | 20μg | |
TagYFP局在化解析用ベクター | |||
pTagYFP-actin | FP134 | 20μg | |
pTagYFP-tubulin | FP135 | 20μg | |
pTagYFP-mito | FP137 | 20μg |
TagRFP
TagRFPは、野生型RFPタンパク質であるイソギンチャクEntacmaea quadricolor由来のタンパク質です。赤色蛍光のTagRFPは、これまでのモノマー型の赤色蛍光タンパク質で最も高い蛍光輝度を示します。TagRFPは哺乳類細胞で発現させた場合、トランスフェクションの10-12時間後に蛍光シグナルを検出可能です。
■TagRFPの各種融合体タンパク質の発現
一過性のトランスフェクションにより、HeLa細胞において、TagRFPとさまざまなタンパク質の融合体を発現させたデータ。
データ提供:Michael W. Davidson(Florida State University)
TurboFPs
TurboFPsは、ダイマータイプの蛍光タンパク質です。Evrogen社では、TurboFPs融合体作製用ベクター、局在化解析用ベクターを用意しています。
特長
- ダイマータイプの高輝度蛍光タンパク質発現ベクター
- 高輝度かつ成熟の早い蛍光タンパク質発現ベクター
- 細胞やオルガネラの標識、プロモーター活性の測定などが可能
使用例
■他社赤色蛍光タンパク質との比較
TurboRFPは、トランスフェクションの22時間後に高輝度の蛍光強度を示した。またTurboRFPは、細胞質全体に発現する一方で、製品AおよびBは、トランスフェクションの7日後に異常なゴルジ体と考えられる部位に局在化した。
主な性質と推奨用途
製品グループ | TurboFPs | ||||
---|---|---|---|---|---|
GFP | YFP | RFP | FP602 | FP635 | |
蛍光色 | 緑 | 黄色 | 赤(橙) | 真赤 | 近赤外 |
励起波長 | 482nm | 525nm | 553nm | 574nm | 588nm |
蛍光波長 | 502nm | 538nm | 574nm | 602nm | 635nm |
量子収率 |
0.53 |
0.53 | 0.67 | 0.35 | 0.34 |
分子吸光係数 | 70000 | 105000 | 92000 | 74400 | 65000 |
輝度 | 37.1 | 55.7 | 61.6 | 26.0 | 22.1 |
EGFPに対する輝度(%) | 112 | 169 | 187 | 79 | 67 |
pKa | 5.2 | 5.9 | 4.4 | 4.7 | 5.5 |
構造 | 二量体 | 二量体 | 二量体 | 二量体 | 二量体 |
凝集性 | なし | 高濃度であり | なし | なし | なし |
成熟(37℃) | 超迅速 | 超迅速 | 超迅速 | 迅速 | 超迅速 |
光安定性 | 髙 | 髙 | 髙 | 中 | 髙 |
分子量(kDa) | 26 | 26 | 26 | 26 | 26 |
推奨用途 | |||||
細胞ラベリング 哺乳類 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ |
細胞ラベリング バクテリア | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
プロモーター活性 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
安定発現 | 可能 | 不明 | 不明 | 可能 | 可能 |
複合体作製 | △ | △ | △ | △ | △ |
TurboFPsの適切なフィルターセットについて
TurboGFP | QMAX-Green、XF100-2、XF100-3、XF115-2、XF116-2フィルターセット(オメガ社) *EGFPやFITCを含む緑色色素に共通のフィルターセットでも検出可能 |
TurboYFP | XF104-3フィルターセット(オメガ社) 42003("ZsYellow1")フィルターセット(Chroma Technology社) |
TurboRFP | QMAX-Yellow、XF108-2、XF101-2、XF111-2フィルターセット(オメガ社) *TRITCフィルターセットおよび類似のフィルターセットでも検出可能 |
TurboFP602 | QMAX-Red、XF102-2フィルターセット(オメガ社) *TRITCフィルターセットおよび類似のフィルターセットでも検出可能 |
TurboFP635 | QMAX-Red、XF102-2フィルターセット(オメガ社) *Texas Redフィルターセットおよび類似のフィルターセットでも検出可能 |
TurboGFP
TurboGFPは、カイアシ類Pontellina plumata由来の緑色蛍光タンパク質CopGFPを改変したバリアントタンパク質です。TurboGFPは他のGFPタンパク質よりも、非常に迅速に成熟化します。これらの性質からTurboGFPは、細胞やオルガネラの標識、プロモーター活性の追跡などへの使用が推奨されます。
■TurboGFPの迅速な成熟化を応用した初期胚での発現
TurboGFPとEGFP発現ベクターをXenopusの胚にマイクロインジェクションした結果、TurboGFPは初期原腸胚(データ左側)、後期原腸胚(データ右側)共に緑色蛍光を発する一方、EGFPはいずれの場合も蛍光が確認されなかった。以上の結果、初期における急速な胚の発達の観察を解析することが必要とされる実験にも適用することが示されている。
データ提供:Dr. A. Zaraisky(Institute of Bioorganic Chemistry, RAS(Moscow, Russia))
■TurboGFPを用いた細胞質およびオルガネラでの発現
(A)TurboGFPを用いたCHO-K1細胞における細胞質発現、(B)TurboGFP-fibrillarin融合タンパク質のHeLa細胞における核内発現、(C)ミトコンドリアターゲッティング配列を付加したTurboGFPのHeLa細胞におけるミトコンドリアでの発現、(D)ミトコンドリアターゲッティング配列を付加したTurboGFPのT24ヒト膀胱癌種細胞におけるミトコンドリアでの発現。
データ提供:Dr. Christian Petzelt(Marinpharm)
TurboYFP
TurboYFPは、クラゲ類Phialidium sp由来の黄色蛍光タンパク質PhiYFPを改変したバリアントタンパク質です。TurboYFPの高輝度の黄色蛍光は、 GFPやRFPの間の蛍光波長、すなわち538nmに蛍光波長を有することから、共通の検出チャネル型や1種類のレーザー励起光照射型のフローサイトメトリーによるGFP、RFP、YFPの分離に適しています。
■TurboYFPを用いた細胞質での発現
TurboYFPを用いたPhoenix細胞における細胞質発現。
製品名 | メーカー 製品番号 | 容量 | オンライン カタログへ |
---|---|---|---|
TurboYFP哺乳類細胞発現ベクター | |||
pTurboYFP-C | FP611 | 20μg | |
pTurboYFP-N | FP612 | 20μg | |
TurboYFPバクテリア発現ベクター | |||
pTurboYFP-B | FP613 | 20μg | |
TurboYFPプロモーターレスベクター | |||
pTurboYFP-PRL | FP615 | 20μg |
TurboRFP
TurboRFPは、イソギンチャクEntacmaea quadricolor由来の新しい赤色蛍光タンパク質です。TurboRFPは、DsRed2の2倍以上蛍光強度が高く、細胞質での分散した発現、迅速な成熟化の性質を持ち、トランスフェクションの8-10時間後から蛍光シグナルを検出可能です。
■TurboRFPを用いた細胞質およびオルガネラでの発現
TurboRFPの細胞質での発現(A)およびミトコンドリアターゲッティング配列を付加したTurboRFPのミトコンドリアでの発現(B)。HeLa細胞にそれぞれのベクターをトランスフェクションのした後、24時間後に検出したデータ。
TurboFP602
TurboFP602は、赤色タンパク質のTurboRFPの蛍光波長を赤外にシフトさせたバリアントタンパク質です。この性質により、TurboFP602は、真赤の蛍光を示しバックグラウンドのシグナルと区別することが可能です。TurboFP602はさまざまな生物種で発現、検出可能であり、哺乳類細胞においては、トランスフェクションの8-12時間後に蛍光シグナルを検出可能です。また、細胞毒性や凝集も確認されません。
(A)Phoenix細胞への一過性のトランスフェクションしたデータ、(B)ミトコンドリアターゲッティング配列を付加したTurboFP602をHeLa細胞に一過性でトランスフェクションした細胞の検出データ、(C)ヒトメラノーマセルラインMel-Juso.に安定的にトランスフェクションした細胞の検出データ
データ(C)提供:Dr. Christian Petzelt(Marinpharm)
TurboFP635
TurboFP635(Scientific Name:Katushka)は、イソギンチャクEntacmaea quadricolor由来の赤色タンパク質の変異体で、近赤外に蛍光を持つ新規赤色蛍光タンパク質です。TurboFP635は、スペクトルが類似した赤色蛍光タンパク質と比較し、7-10倍程度蛍光強度が高く、成熟速度が迅速かつ光安定性の高い製品です。TurboFP635は、全身イメージングやデュアルカラーをベースとしたハイスループット解析等に適しています。
■アフリカツメガエルの全身イメージング比較データ
2.5ヶ月齢のTurboFP635、製品Bのそれぞれを発現するトランスジェニックアフリカツメガエルを背面から撮影。
右図よりTurboFP635は個体全体を可視化することが可能な一方、製品Bはほとんど検出されなかったことから、FP635の長波長性の蛍光特性が、全身イメージングに適することが示されています。
データ提供:Shcherbo et al.
■TurboFP635を用いた細胞質での発現
TurboFP635発現ベクターの(A)Phoenix細胞への一過性のトランスフェクション、(B)WALKER 256ラット腫瘍細胞への安定的なトランスフェクション、(C)T24ヒト膀胱癌種細胞への安定的なトランスフェクション、(D)転移性黒色腫MelJuSo細胞への安定的なトランスフェクションデータ。
データ提供:Dr. Christian Petzelt(Marinpharm)
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Invitrogen Gateway® Technology
Invitrogen Gateway® Technology: please see Limited Use Label License No. 19: Gateway Cloning Products.
※記載の内容は、'08年6月現在の情報に基づいております。